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企業のコーポレートカラーはどう決まるのか|色彩心理とブランド想起の理論

9月21日
読了時間: 7分

ロゴを隠しても「あの会社だ」とわかる色がある。その色は、偶然ではなく、設計と反復によって記憶に刻まれている。


青い看板、赤い缶、水色の小箱。私たちは日常の中で、社名を読む前に色で企業を見分けています。コーポレートカラーはロゴの一部として扱われがちですが、実際にはブランド認知の入口であり、制服・名刺・封筒・ノベルティといった「モノ」を通じて何度も接触することで、はじめて記憶として定着します。今回は、色彩心理とブランド論の研究を手がかりに、企業の色がどのように決まり、どのように「その会社の色」になっていくのかを整理します。

体育館で練習する卓球クラブの選手たちと、企業のコーポレートカラーはどう決まるのかというタイトル
イメージ画像(SOLLED作成)

目次 1. 色は言葉より先に届く 2. 理論①:色が運ぶ「性格」の連想 3. 理論②:ブランド想起と「色の所有」 4. 実例:色そのものが商標になった企業 5. コーポレートカラーはどう決まるのか 6. 中小企業が色を決めるときの3つのチェック 7. 経営者向けに言えば


1. 色は言葉より先に届く


人間の視覚は、形や文字を読み取る前に、色を面として捉えます。看板が遠くにあるとき、社名は読めなくても色は判別できる。この「色が先に届く」という性質が、コーポレートカラーの出発点です。

色彩心理の分野では、色相ごとに連想されやすいイメージが一般的な傾向として整理されています。青は信頼や冷静、赤は情熱や注意喚起、緑は安心や自然、黄は明るさや注目、黒は高級感や洗練といった具合です。ただし、これらは文化や文脈によって変わります。たとえば白は日本では清潔や神聖を連想させる一方で、地域によっては弔事の色でもあります。連想は「絶対的な法則」ではなく、「多くの人が共有しがちな傾向」として扱うのが正確です。


青・赤・緑・黄・黒それぞれに連想されやすいイメージと業種例をまとめた図
図:色相ごとに連想されやすいイメージ(SOLLED作成)

業種と色の関係を見ると、金融やITに青が多く、飲食や小売に赤が多いのは、この傾向を各社が意識的、あるいは無意識に採用してきた結果だと考えられます。


2. 理論①:色が運ぶ「性格」の連想


色とブランドの関係を実証的に扱った研究として、マーケティング研究者のラブレック(Lauren Labrecque)とミルン(George Milne)が2012年に発表した論文がよく引用されます。彼らは、ブランド・パーソナリティ(ブランドを人に見立てたときの性格)と色相の関係を調べ、赤は「刺激的」、青は「有能」といった連想が一定の再現性を持って現れることを示しました。

ここで重要なのは、色が「性格の第一印象」を作るという点です。人は初対面の相手を数秒で評価してしまうのと同じように、企業に対しても色を通じて「堅実そう」「元気そう」「高級そう」という印象を先に形成します。その後に接する営業担当の話し方や、商品の品質は、この第一印象の枠の中で解釈されやすくなります。

裏を返せば、自社の実態と色の連想がずれていると、顧客は「何か違う」という違和感を覚えます。堅実さを売りにする会計事務所が蛍光色を使えば、いくら丁寧に説明しても「軽い」という印象が残る。色の選択は装飾ではなく、企業が顧客に「自分はこういう性格です」と申告する行為だと言えます。


3. 理論②:ブランド想起と「色の所有」


ブランド論の分野では、ケビン・レーン・ケラー(Kevin Lane Keller)が提唱した「ブランド知識」の枠組みがよく知られています。ケラーはブランド認知を二つに分けました。手がかりを見せられて「知っている」と気づく「再認(recognition)」と、手がかりなしに自分の頭の中から思い出せる「想起(recall)」です。ビジネス上価値が高いのは後者の想起で、「ユニフォームを頼むなら、あの会社」と自発的に名前が出てくる状態を指します。

色は、この想起の引き金として非常に強く働きます。店頭で水色の小箱を見た瞬間に特定の宝飾ブランドを思い出す、というように、色そのものが記憶の索引になるのです。ただし、色が索引として機能するには条件があります。「同じ色を、長期間、あらゆる接点で、一貫して」使い続けることです。


色を見る、連想する、繰り返し出会う、色だけで思い出す、の4段階を示すアニメーション
図:色がブランドの記憶になるまでの4段階(SOLLED作成/アニメーション)

この「一貫した反復」は、心理学で言う単純接触効果(何度も接するほど好意や親近感が増す現象)とも重なります。制服、名刺、看板、手提げ袋、ノベルティ。それぞれは小さな接点ですが、同じ色で統一されていれば、顧客の頭の中では一つのまとまった記憶として蓄積されていきます。逆に、パンフレットは青、店舗は緑、ユニフォームは黒、と接点ごとに色がばらばらだと、接触回数がどれだけ多くても記憶は分散し、想起にはつながりません。


4. 実例:色そのものが商標になった企業


色がどれほど強いブランド資産になりうるかを示す制度的な事実があります。日本では2015年4月の商標法改正で、図形や文字を伴わない「色彩のみからなる商標」の登録が認められるようになりました。2017年には、文房具メーカーの消しゴムに使われる青・白・黒の三色の組み合わせや、コンビニエンスストアのオレンジ・緑・赤の三色の組み合わせが、色彩のみの商標として初めて登録されたと報じられています。

登録の要件は厳しく、その色を見ただけで多くの人が特定の企業を思い浮かべる、という「識別力」が必要とされます。つまり、色彩商標が認められたということは、その色が国レベルで「この会社のもの」と認められるほど記憶に定着している、という証明でもあります。

海外に目を向ければ、宝飾ブランドの水色や、飲料メーカーの赤のように、色がブランド名の代わりを務める例はいくつもあります。共通しているのは、どの企業も創業から数十年にわたって色を変えず、包装・店舗・広告・制服のすべてに同じ色を使い続けてきたことです。


5. コーポレートカラーはどう決まるのか


では、そもそも企業の色はどのように決まるのでしょうか。実際の経緯を整理すると、大きく四つの決まり方があります。

① 創業者の思い入れから決まる

創業者が好きだった色、故郷を象徴する色、最初の商品のパッケージに使った色が、そのまま企業の色になるケースです。合理的な理由は後付けされることが多いのですが、創業の物語と結びついているため、社内での納得感が強いという利点があります。

② 業界の慣習に合わせて決まる

金融なら青、医療なら白や緑、というように、業界に期待される「らしさ」に合わせる決め方です。顧客の期待を裏切らないため安全ですが、競合との差別化は難しくなります。

③ 競合との差別化から決まる

業界の多くが青を使っているなら、あえて赤やオレンジを選ぶ、という決め方です。棚や街頭で目立つという実利があります。飲料や小売のように、店頭で並んで比較される業種で多く見られます。

④ 理念や意味づけから決まる

企業理念や提供価値を色に翻訳する決め方です。「信頼」を表す青、「挑戦」を表す赤、「品質」を表す黒、といった具合に、まず言葉があり、それに合う色を選びます。説明可能性が高く、社員にも顧客にも共有しやすいのが特徴です。

実際には、これらが混ざり合って決まることがほとんどです。大切なのは、どの決め方であっても「決めたら変えない」こと。色は選んだ瞬間に価値を持つのではなく、使い続けた年月によって価値が積み上がる資産だからです。


6. 中小企業が色を決めるときの3つのチェック


従業員数十名規模の企業が、これからコーポレートカラーを決める、あるいは見直す場合、次の三点を確認しておくと失敗が減ります。

  • 競合と被っていないか:同じ地域・同じ業種で、すでに同じ色を使っている会社がないかを確認する。似た色が並ぶと、せっかくの接触が相手の記憶に流れてしまう

  • 印刷や刺繍で再現できるか:画面上で美しい色でも、Tシャツのプリント、刺繍糸、ボールペンの軸色では出せないことがある。CMYKの数値と、既製品の色展開の両方で確認しておく

  • 制服・ノベルティに使えるか:毎日着る制服や、人に配るグッズに使ったときに「派手すぎないか」「汚れが目立たないか」を実物で確かめる


オレンジのドライTシャツにクラブロゴをプリントしたTRUST卓球クラブのウェア
クラブカラーのオレンジで統一したTRUST卓球クラブのウェア。制服・グッズの色をそろえる第一歩(SOLLED制作)

特に三つ目は見落とされがちです。色は画面や紙で決めるものではなく、最終的には「モノ」の上で顧客の目に触れます。ボディカラーの選び方やプリント方法による発色の違いは、オリジナルTシャツの作り方完全ガイドとDTFプリントとは?シルクスクリーンとの違いと選び方で詳しく解説しています。


7. 経営者向けに言えば


コーポレートカラーは「決める」ことより「使い続ける」ことに価値があります。研究が示しているのは、色が第一印象の性格を作り(ラブレックとミルン)、一貫した反復によって想起の引き金になる(ケラー)という二点です。そして色彩商標の制度は、その積み重ねが法的に守られる資産にまで育つことを示しています。

中小企業にとって現実的な一歩は、制服・名刺・封筒・ノベルティといった、顧客と社員が毎日触れる接点の色をそろえることです。広告費をかけなくても、接点の色が一つにまとまるだけで、顧客の頭の中の記憶は集約されはじめます。

SOLLEDでは、ユニフォームとノベルティをまとめてコーポレートカラーで統一する提案を行っています。色の見直しを考えている方は、LINEから気軽にご相談ください。

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